個人事業主は年内に確認しよう。所得税・消費税の申告

こんにちは。大阪市城東区の税理士泉井です。

12月に入り今年もあと1ヶ月となりました。

会社員の方は年末調整の書類の準備をしていますが、個人事業主の方は確定申告に向けて何か準備はしていますか?

年が明けてから一気に片付ける人が多いかもしれませんが年内に是非確認したいこともあるので一緒に確認していきましょう。

個人事業主の税金の申告・納税時期

個人事業主は所得税と消費税の申告が必要です。

消費税の申告は一昨年の課税売上または昨年の課税売上が1,000万円超などの場合に必要になります。

所得税や消費税の他にも住民税や事業税といった税金がありますが、こちらは所得税の申告を基に計算されるので普通は手続きの必要ありません。

申告時期と納付期限は次のようになります。

種類申告期限納付期限
所得税翌年3月15日申告期限と同じ
消費税翌年3月31日申告期限と同じ
住民税翌年3月15日(所得税の申告すれば不要)翌年6月・8月・10月、翌々年1月
事業税翌年3月15日(所得税の申告すれば不要)翌年8月・11月

納付税額が多い人は3月以外にも予定納税と言って税金の前払いの必要があります。この場合納付書は税務署から送られてきます。(所得税は7月と11月、消費税は8月などに納付)

所得税について年内にするべきこと

所得税の計算方法

個人事業主の所得税は次のように計算します。

売上ー売上原価ー経費=事業所得

事業所得ー所得控除(社会保険料控除・扶養控除・医療費控除など)=課税所得

課税所得×所得税率ー税額控除(住宅ローン控除など)=所得税額

所得税率は課税所得に応じて5%~40%となっています(令和19年まで所得税に2.1%をかけた復興所得税もかかります)。

10月までの利益の確定

年が明けてから一度に経理をするのではなく、年内に一度は集計して利益がどれくらいあるか確認しておきましょう。

個人の税金は1月から12月までの期間で計算します。

翌年の確定申告時期にまとめて売上・原価・経費を集計して想定外の利益があることに気付いても節税対策することができません。

事業の規模が大きくて消費税の申告も必要な方は納税額も大きくなるので、申告時期だけでなく定期的に損益を把握して納税がどれくらいになるか確認しましょう。

小規模企業共済の加入または掛金変更

小規模企業共済とは中小企業基盤整備機構というところに掛金を支払い、事業を辞めたときに共済金を受け取ります。

自分で退職金を積み立てるようなもので個人事業主や会社役員の方が加入できます。

詳しくはこちらをご参照ください。→小規模企業共済で節税しながら退職金の準備を!

掛金は月額1,000円から7万円までの範囲で自由に決めることができ、後で金額の変更もできます。

小規模企業共済は年内に払った金額の全額が「所得控除」となります。

また、年払いもできるので12月に掛金月額7万円を年払いで払えるので84万円の所得控除となります。

節税効果としては84万円×税率(所得税5%~40%+復興税所得税の2.1%+住民税10%)となり利益が大きいと節税額も大きくなります。

小規模企業共済は加入期間が短いと元本割れするので、毎年84万円も払えない場合は掛金を下げて解約はしないようにしましょう。

経営セーフティ共済の加入(中小企業倒産防止共済)

経営セーフティ共済とは取引先の倒産などもしもの時に掛金の10倍まで借りることができる制度です。

掛金は月5千円~20万円までで全額「経費」となります。

また、12ヶ月分をまとめて払う「前納」という制度があるので12月に加入して最大240万円の掛金を支払って経費に計上することができます。

小規模企業共済と同じく「支払額×税率」の分だけ税金は減りますが、解約したときは解約金の全額が収入となるので節税というより税金支払いを将来に繰り延べていることになります。

ですが掛金の10倍の借入ができるので余裕があるときに加入しておくと将来資金繰りが苦しい時に利用することができます。

少額減価償却資産の購入

10万円以上の固定資産を購入しても購入した日に全額経費になりません。

減価償却という方法で数年間に分けて経費になり、12月に購入し使用したものは数年に分けた経費をさらに1ヶ月分だけしか経費になりません。

なので固定資産を年末に購入してもその年の経費はあまり増えないのです。

ですが、青色申告をしていれば30万円未満の固定資産は減価償却は不要で全額いっぺんに経費にすることができます(年間300万円までの上限有り)。

あと注意が必要なのは注文や購入しただけでは経費になりません。

使い始めたときに経費になるので、手元に届いてもとりあえず置いておくだけでは経費にならないので気を付けてください。

通販などで少額減価償却資産を注文する時は年内に届いて実際に使用できるか、配送日を確認するようにして下さい。

青色事業専従者へボーナスの支給

こちらも青色申告をしていれば配偶者など生計を一にする親族に給与や賞与を支払うことができます。

ただし、事前に税務署へ金額や支給時期などの届出が必要で、記載した金額の範囲内でしか支払うことができません。

白色申告の人は来年からは青色申告してみては

白色申告でも記帳や帳簿の保存が必要となっており、白色申告でいるメリットがほとんどありません。

まだ青色申告をしていない人はこの機会に青色申告の申請をしてはいかがですか?青色申告の承認申請書の記載例はこちら

青色申告のメリットなどについてはこちら→自営業者の青色申告、いつまでに提出が必要?

住民税について年内にするべきこと

住民税は所得税の計算とほぼ同じで、一律10%の税率と年間約5千円の均等割があります。

お住いの市町村によって少し税率や均等割の金額が違うところがあります。

あとは所得控除や税額控除が所得税と違うところがありますが、詳しいことは今回は確認しません。

住民税にも税額控除があるのですがその中で多くの人が利用しているのがふるさと納税です。

ふるさと納税で控除できる限度額はその人の課税所得(住民税額)によって違うので自分で計算する必要があります。

今年寄付できるふるさと納税の限度額は今年の課税所得で決まるので、12月に駆け込みで利用する人が多いのです。

確定申告が必要な個人事業主は、所得税の確定申告でふるさと納税した金額を記載する必要があるので忘れずに申告しましょう。

消費税について年内にするべきこと

納税義務の確認

消費税は2年前、または前年の1月から6月までの課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となり申告・納税の必要があります。1,000万円以下の場合は免税事業者となり消費税の申告・納税はありません。

例えば平成30年の年間の課税売上高が1,000万円を超えていれば令和2年分の消費税の申告が必要です(申告期限は令和3年3月31日)。

平成30年が1,000万円以下でも平成31年(令和元年)の1月~6月の課税売上高(課税売上高の代わりに給与支払額で判定してもOK)が1,000万円を超えていれば、令和2年分の消費税の申告が必要です。

なので今年の売上が年内にある程度予測ができれば来年・再来年分の消費税申告の有無がわかります。

消費税の納税義務についてはこちらの記事も参考にしてください。→個人事業主はいつから消費税の申告が必要?

課税事業者の選択

消費税は簡単にいうと預かった消費税から支払った消費税を引いた差額を納付します。マイナスの場合は還付されます。

多額の設備投資などの場合は還付になることが多いのですが、免税事業者の場合はそもそも申告しないので還付されません。

そこで「課税事業者選択届出書」を税務署に提出することで、本来免税事業者だったのを課税事業者に変更することができます。

この届出書の提出期限は課税事業者を選択する年の前年までなので、来年多額の設備投資があり消費税の還付が見込まれる場合は今年の年末までに届出書を提出する必要があります。

ただし一度課税事業者を選択すると最低2年間は課税事業者になるので慎重な判断が必要になります。

簡易課税の検討

簡易課税とは売上のみから納付税額を計算する消費税の特例です。

簡易課税による消費税の計算はこちらの記事をご覧ください。→消費税 簡易課税の計算方法

この特例を受けるには2年前の課税売上高が5,000万円以下で「消費税簡易課税制度選択届出書」を受けようとする前年中に提出する必要があります。

なので来年分から簡易課税の方法で計算したいときは今年のうちに届出書を提出する必要があります。

簡易課税で計算した方が通常の計算方法より納付税額が少なくなる場合があるので、今年の数字を使ってシミュレーションするといいです。

まとめ

年内に経理を進めてある程度今年の収支が見えてくると確定申告時期はバタバタせずに申告できますし、納税資金の準備もしやすくなります。

また、節税対策や消費税の届出は年内までにする必要があるので今年のうちにできるところから対策をしていきましょう。