住宅ローン控除の住民税・ふるさと納税に及ぼす影響

こんにちは。大阪市城東区の税理士泉井です。

今回は住宅ローン控除が住民税にどう影響するのか確認していきます。

また、ふるさと納税の限度額に影響があるのかも調べていきます。

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンを利用してマイホームの新築、取得又はリフォームをした場合に、一定の要件のもと所得税の控除を受けられる制度です。ローン控除の金額が所得税額より多い場合は住民税からも一部控除されます。

控除期間は10年間(消費税率10%で購入した場合は13年間)あります。

年間の所得税から控除できる金額は以下のうちいずれか少ない金額の1%で最大40万円(認定住宅の場合は50万円)あります。給与所得者の場合年収700万円以上ないと所得税40万円にはいかないのではないでしょうか。

  • 毎年末の住宅ローン残高
  • 住宅の購入金額

住民税の控除について

最大40万円控除できるといっても控除前の所得税が40万円ある人はあまりいないでしょう。

しかし、所得税で控除しきれなかった金額は住民税からも控除できます。

では、住民税で控除を受けるには確定申告のように何か必要な手続きはあるのでしょうか。

答えは住民税の手続きは何もしなくていいです。所得税のような手続きは必要ありません。。

年末調整や所得税の確定申告で住宅ローン控除を受けていれば住民税からも一部、控除を受けることができます。

住民税のローン控除額

では、所得税から控除しきれなかった金額の全額が住民税から控除されるのでしょうか。

住民税から控除できる金額には上限があり、居住年によって変わります。

平成26年4月から令和3年12月までの間に居住した場合の控除額

次のいずれか少ない金額となります。ただし消費税率8%又は10%で住宅を取得等した場合です。それ以外の場合は②になります。

  • 所得税の住宅ローン控除ができる金額から実際に所得税額から控除した残額
  • (A)×7%(この金額が13万6,500円を超える場合は13万6,500円)

(A)…前年分の所得税の課税総所得金額。簡単に言うと所得税率をかける前の金額です。給与所得額や事業所得額の合計額から社会保険料控除額や医療費控除額などの所得控除額を引いた金額。

平成21年1月から平成26年年3月までの間に居住した場合の控除額

次のいずれか少ない金額となります。

  • 所得税の住宅ローン控除ができる金額から実際に所得税額から控除した残額
  • (A)×5%(この金額が9万7,500円を超える場合は9万7,500円)

住宅ローン控除で所得税の納付額がなくなったり還付になることはありますが、住民税は減額されますが0円になることはありません。

住民税の控除時期・確認方法

所得税で住宅ローン控除を適用した年の翌年度分の住民税から控除されます。

例 令和2年中に住宅を購入し居住を開始した場合
 1年目 令和3年3月15日までに令和2年分の所得税の確定申告。住民税は令和3年度分で控除される(住民税の手続きは不要)。
 2年目 令和3年分の年末調整又は所得税の確定申告。 住民税は令和4年度分で控除される(住民税の手続きは不要)。
 3年目以降 2年目と同様の流れになります。

住民税で控除されているか確認するには毎年5月~6月頃に市町村から送付される納税通知書を見ればわかります。

納税通知書には収入の内訳や所得控除・税額控除の内訳が記載されています。

住宅ローン控除は「税額控除」になるので税額控除の内訳の「住宅借入金等特別控除額」欄に住民税から控除した金額が記載されています。

給与所得者の方は毎年6月に会社から渡される「特別徴収税額の決定通知書」に記載されています。

しかし、特別徴収税額の決定通知書は記載欄が少ないので税額控除の内訳は記載されておらず合計のみの記載となっています。

税額控除は住宅ローン控除の他にも調整控除やふるさと納税などの寄付金控除があります。

住宅ローン控除とふるさと納税、両方使える?

結論から先に言うと両方使えます。

ただしふるさと納税について、ワンストップ特例制度を使う場合と確定申告する場合で住民税から控除できる住宅ローン控除の金額に違いがでてきます。

ふるさと納税のワンストップ特例制度は住民税が控除対象となります。一方確定申告する場合は所得税で寄付金控除で所得税を減税してから住民税の方で所得税が減税になった額の残りを控除します。

所得税で寄付金控除を受けると課税総所得金額が減るので、住民税の住宅ローン控除限度額が減少し税額控除の恩恵を100%受けられない場合があります。所得金額やローン残高、ふるさと納税の金額にもよるので影響がないこともあります。

なお、ふるさと納税の控除上限金額の計算に使用する住民税の所得割額は住宅ローン控除の金額を引く前の金額になるので、ふるさと納税の控除上限金額には住宅ローン控除は影響しません。

参考:年収500万円、ローン残高3,000万円の場合の所得税・住民税額

所得税・住民税は扶養親族の有無など適用する所得控除によって大きく変わってくるので参考程度にみてください。

  1. 年間の給与総額500万円(給与所得金額356万円)
  2. ローン残高3,000万円
  3. 扶養親族なし
  4. 社会保険料控除額72万8千円
  5. 生命保険料控除額12万円(住民税7万円)
  6. 地震保険料控除額1万円(住民税5千円)
  7. ふるさと納税した金額5万円
  8. 基礎控除額48万円(住民税43万円)
  9. 上記で確定申告する

このような場合、所得税・住民税がいくらになるのか、また、ローン控除やふるさと納税が税金にどう影響するのか検証してみます。

所得税

総所得金額は①の356万円になります。

所得控除額は④~⑧の合計から2千円引いた138万6千円になります。(寄付金控除は支払額から2千円引くため)

所得税の課税所総得金額は217万4千円(356万円ー138万6千円)となります。

所得税額は11万9,900円(217万4千円×10%‐9万7,500円)となります。

ローン控除できる金額は年末借入金残高の1%なので30万円となります。

11万9,900円<30万円 なので確定申告で納付する所得税はありません。源泉徴収されている所得税があれば全額還付されます。

住民税

住民税は確定申告や年末調整のデータが市町村に送られるので手続きは必要ありませんし、税額も役所が計算してくれますが概算で計算してみます。

総所得金額は所得税と同じですが所得控除の金額は所得税と住民税で違います。

ふるさと納税は税額控除で使うので所得控除の金額は④⑤⑥⑧の合計123万3千円になります。

住民税の課税所得金額は232万7千円になります。

税率は10%なので住民税の所得割額は23万2,700円となります。本来都道府県(2%)と市町村(8%)で分けて計算するのですが今回は合計して計算します。

次に税額控除の金額を計算します。

住宅ローン控除額

ローン控除30万円のうち11万9,900円は所得税から控除したので残り18万100円になります。

所得税の課税所得金額の7%が住民税から控除できるので今回の例だと

217万4千円×7%=15万2,180円ですが、13万6,500円までが限度になります。

したがって、18万100円と13万6,500円の小さい方の金額である13万6,500円が住民税から控除できます。

寄付金(ふるさと納税)税額控除額

住民税からは①基本控除額と②特例控除額の合計を控除します。

①基本控除額とはふるさと納税した金額から2千円引いた残額に住民税の税率(10%)をかけた金額です。今回だと4,800円になります。

②特例控除額とはふるさと納税した金額-2千円(4万8千円)のうち所得税で控除した金額(4,800円)と住民税の①基本控除額で控除した金額(4,800円)の残りの金額(3万8,400円)となります。

計算式は下記のようになります。

(5万円-2千円)×(100%-(所得税率(今回の例だと10%)+住民税率(10%)))

特例控除額は住民税所得割額(今回の例だと23万2,700円)の20%が限度となります。(4万6,540円が限度)

したがって住民税から控除できるのは①と②の合計4万3,200円となります。

住民税納付額

住民税の納付額は23万2,700円(所得割)-13万6,500円(ローン控除)-4万3,200円(ふるさと納税)+5,300円(大阪府・大阪市の均等割)の合計5万8,300円となります。