資本金を決める時は税金の影響も考えて

こんにちは。大阪市城東区の税理士泉井です。

会社を作る時に資本金をいくらにしたらいいのか。

最低資本金制度が撤廃され、資本金が1円でも株式会社を作ることができますが、極端に少ないと開業準備や初期の仕入ですぐに債務超過になったり、取引先や金融機関からの信用が得られない場合があります。

一般的には運転資金の3ヶ月~6ヶ月程度の金額の資本金で起業することが多いようです。

また、資本金の額によって税金の額が大きく変わってきますのでこのことも考慮して資本金の額を決めていきましょう。

税金で気を付けるべき資本金の額のライン

資本金の額によって税務上受けられる特典が変わってきます。

特典が変わるラインは1千万円、3千万円、1億円と3段階あり、資本金が低い方が受けられる特典が多くなっています。

資本金はいつでも増減できますが、設立時のままでいる会社が多く機械などの大きな設備必要なければ資本金1千万円前後の会社が多い印象です。

以前まで設立できた有限会社は資本金300万円以上必要だったので、この数字が起業の必要ラインではないでしょうか。

資本金1千万円は消費税と均等割に気を付ける

1千万円未満で受けられるもの

●消費税の納税義務の免除

法人設立後2年間は原則として消費税の申告は免除されますが、設立時の資本金が1千万円以上あると消費税の申告が必要となります。

※ただし、届出により設立1期目から消費税の申告をすることもできます。また特定新規設立法人に該当するなど一定の場合には資本金が1千万円未満でも消費税の申告が必要となるケースがあります。

1千万円以下で受けられるもの

●法人住民税の均等割

法人住民税は、会社の利益から計算する「法人税割」と資本金等の額と従業者数から計算する「均等割」の2種類があります。

厳密に言えば均等割でチェックするのは期末の資本金等の額です。

資本金だけでなく資本準備金なども含まれます。

均等割は赤字でも毎年発生します。

大阪府と大阪市の均等割は以下の金額となります。

 

資本金等の額・従業者数 大阪府 大阪市
1千万円以下・50人以下 2万円 5万円
1千万円以下・50人超 2万円 12万円
1億円以下・50人以下 7万5千円 13万円
1億円以下・50人超 7万5千円 15万円
10億円以下・50人以下 26万円 16万円
10億円以下・50人超 26万円 40万円
50億円以下・50人以下 108万円 41万円
50億円以下・50人超 108万円 175万円
50億円超・50人以下 160万円 41万円
50億円超・50人超 160万円 300万円

資本金300万円で従業員数が50人以下の会社では、大阪府に年2万円、大阪市に年5万円、合計年7万円が赤字でも発生します。

資本金3000万円で従業員数が50人以下の会社では、大阪府に年7万5千円、大阪市に年13万円、合計年20万5千円が赤字でも発生します。

また、市町村では従業者数が50人を超えるか超えないかでも均等割が変わってきます。

この従業者数にはパートやアルバイトも含まれますが短時間労働者の割合が多い会社だと社員の割合が多い会社より50人超えやすくなってしまいます。

そこでパートやアルバイトに関しては1ヶ月の全員の労働時間で人数をカウントすることもできます(170時間で1人)。

消費税免税のメリットは大きい

設立から最大2期分の消費税が免除になるのは大きなメリットになります。

通常、年間売上が2千万円の飲食店が簡易課税で消費税申告すると1年で80万円の消費税の納税が発生しますが、これが最大2期分(160万円)免除になるのです。

ただし設備投資がたくさんある場合など敢えて消費税の免除を受けない方がいい会社もあるので消費税に関しては税理士としっかりシミュレーションする必要があります。

均等割は赤字でも黒字でも毎期必ず発生するので長期でみると消費税より影響が大きくなることもあります。

また、均等割りは都道府県・市町村ごとに必要なのでチェーン店など複数の市町村に店舗や事業所がある会社は余計に負担が大きくなります。

資本金3千万円以下は特別控除が受けられる

●中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除

  • 資本金3千万円以下の場合…「特別償却」又は「税額控除」の選択適用可
  • 資本金3千万円超の場合…「特別償却」のみ

※特別償却とは投資した事業年度に通常の減価償却に加えて取得価額に一定割合を乗じた金額を上乗せして償却できる制度です。その後の減価償却費は上乗せした分が減少するので償却費の先取りといったイメージです。

※税額控除とは法人税額から一定額が特別に控除できる制度です。当然、通常の減価償却費も使えるので利益があって法人税額が発生している場合は、特別償却よりも税額控除の方が有利なケースがほとんどです。

償却期間全体でみると特別償却と特別控除では特別控除の方が節税効果が高いです。

上述したとおり特別償却は減価償却費の先取りなので特別償却してもしなくても償却期間で費用になる合計額は同じになるからです。

特別控除は償却費として費用にする、プラス、法人税から一定額引けるので、この一定額控除できる分だけ特別償却よりお得になります。

ただし、控除する法人税がないと意味がないのである程度の黒字がないと最大限のメリットを受けられません。

資本金1億円は大企業

詳細は省略しますが資本金1億円前後では税金面ではデメリットになることが多くあります。

資本金1億円以上で国税局が担当になる

●税務署所管から国税局所管に移行する

資本金が1億円以上になると税務署所管から国税局所管へ移行します(申告先は税務署ですが)。

国税所管になると会社事業概況書の様式が変更されるのと、税務調査の時に税務署ではなく国税局の調査課の担当者が来ることになります。税務署の調査よりも担当者の人数が増えたり調査期間が長くなる場合が多いです。

資本金1億円超で制限が増える

  • 法人税・法人住民税の税率が高くなる
  • 事業税の外形標準課税の対象となる
  • 欠損金の繰越控除の制限・欠損金の繰戻還付の適用不可
  • 交際費の全額損金不算入
  • 30万円未満の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用不可

会社設立時には消費税の申告をどうするかがポイント

以上のように、税金面では消費税の申告が不要な資本金1千万円未満で事業を始めるのが得策かもしれません。

しかし、設立時に多額の設備投資がある場合は課税事業者選択の届出をして1期目に消費税の還付申告をした方が得なケースもあります。

また、設立時に設備投資が必要であれば資本金が1千万円以上になるかもしれません3千万円のラインになることもあるでしょう。

設備投資には前述の特別償却・特別控除の適用を受けれる可能性もあるのでその辺りも検討するようにしましょう。

資本金を増やさずに社長から借りることも検討しては?

運転資金や開業資金の全てを資本金にする必要はなく社長(役員)から借りたり銀行などから創業融資を受けることもできます。

社長からの借入金であれば返済期間は自由に決めれますし、役員報酬を少なめにしてその分を返済にあてれば会社に利益が残って社長の税金を少なくすることもできます。