インボイスが始まると簡易課税はお得?

こんにちは。大阪市城東区の税理士泉井です。

今回はインボイス制度が始まると消費税の簡易課税を選択している事業者にはどのような影響があるのか、また免税事業者がインボイス制度開始と同時に課税事業者となり簡易課税を選択するとどれくらいの消費税額が発生するか確認していきます。

インボイス制度の登録についてはこちら→令和3年10月、消費税のインボイス制度の登録申請の受付が始まります!

簡易課税制度とは

消費税は売上に係る消費税から仕入・経費に係る消費税を控除した残りを納税するのが原則(本則課税)ですが、簡易課税制度を選択すると売上に係る消費税の○○%(10%~60%と業種によって異なります)を納税する(簡易課税)ことになります。

仕入・経費の消費税をみなくていいので、「この支払は消費税の対象で、これは消費税の対象外、これは軽減税率だから消費税率8%・・・」など、取引ごとに判断する必要がありません。

簡易課税についてはこちら→消費税 簡易課税制度の事業区分について

            →消費税 簡易課税の計算方法

また、インボイス制度が始まると仕入・経費の支払先が登録事業者か確認する必要がありますが簡易課税制度ですとその必要がありません。

ただし、本則課税の方法で計算した方が納税額が少なくなる場合もありますので簡易課税を選択するときはよく検討する必要があります。

簡易課税業者がインボイス制度の登録事業者になる場合の影響

インボイス制度の登録事業者になるか否かは事業者の任意ですが登録を受けるか受けないかで以下の違いがあります。

①得意先(売上先)側で仕入税額控除の金額が変わってくる

インボイス制度が始まると売上に係る消費税から控除できる仕入・経費に係る消費税は登録事業者からの仕入・経費のみとなる(ただし6年間の経過措置があります)。

つまり、インボイスの登録事業者以外から仕入等を行うと今までより消費税の納税額が増えてしまいます。

消費税の負担が増えるなら登録事業者以外との取引は今後減少していくかもしれませんので、インボイス制度の登録をしていないと得意先(売上先)が別の事業者に流れていく可能性があります。

②請求書などの記載事項が増える

他にも請求書などに記載する項目が追加されます。

現行(区分記載請求書等)の記載事項
1 請求書発行者の氏名又は名称
2 取引年月日
3 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
4 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
5 請求書受領者の氏名又は名称
インボイス(適格請求書)の記載事項
1 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
2 取引年月日
3 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
4 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
5 税率ごとに区分した消費税額等
6 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

下線部分が追加される項目です。

免税事業者が簡易課税業者になった場合の消費税額は?

年間の売上高が880万円(うち消費税80万円)の場合、納付する消費税額は以下になります。

80万円 ‐ 80万円 × みなし仕入率

みなし仕入率は売上の区分に応じて6段階あります。

  • 卸売業…90%
  • 小売業…80%
  • 製造業など…70%
  • 飲食店業など…60%
  • サービス業など…50%
  • 不動産業…40%

売上がすべてサービス業に該当する場合40万円の消費税を納付する必要があります。

免税事業者の方は登録事業者となってこの消費税を納付するか、登録事業者にならず免税事業者のままで消費税の免除を受けるか選択する必要があります。

取引先にも影響がありますのでよく検討して選択するようにしましょう。