個人と法人の税金・社会保険料の違い
こんにちは。
今回はフリーランス等の個人事業主にかかる税金・社会保険料と株式会社とその社長にかかる税金・社会保険料についてです。消費税については省略しています。
個人事業主にかかる税金は所得税・住民税・事業税があり、社会保険料は国民健康保険・国民年金保険があります。
株式会社等の法人にかかる税金は法人税・住民税・事業税、社会保険料は健康保険・厚生年金保険があり、その社長にかかる税金は所得税・住民税、社会保険料は健康保険・厚生年金保険があります。他に労働保険があるのですが今回は社長のみで従業員はいないと仮定して進めますので省略します。
目次
個人と法人では税率・保険料率が違う
所得が低めのときは個人、ある程度多くなれば法人の方が税率が低い
個人かかる所得税・住民税・事業税、法人にかかる法人税・住民税・事業税が事業をしていくうえで発生してきますが、同じ住民税・事業税でも個人と法人で税率が変わってきます。都道府県・市町村ごとにも税率は違うのですが大きくは変わらないので今回は標準税率でみていきます。
個人にかかる税率は最低15%から最大で55%になり所得に応じて段階的に上昇していきます。
法人に係る税率は22%~36%程度の範囲内で所得が400万円、800万円で変わってきます。また自治体によって若干率が異なってきます。
所得が低いうちは個人の方が税率が低いのですが所得が500万ぐらいで税率が20%を超えてくるので、法人の税率に近くなってきます。
従業員の社会保険の半分は会社が負担しないといけない
社会保険料も個人と法人で異なってきます。個人事業主が加入する国民健康保険・国民年金保険は市町村で加入し、国民健康保険料は前年の所得に応じて計算されます。
法人の社長の場合、健康保険・厚生年金保険は年金事務所で手続きします。健康保険は年金事務所を通して都道府県ごとにある健康保険協会に加入します。保険料は標準報酬月額という月額給与の平均から計算されます。
普通の会社員の方は会社で社会保険に加入した方が保険料の半分を会社が負担してくれるので市町村で加入するよりも得なのですが、社長=会社の株主の場合、会社負担といっても自分で出資した会社の負担なので市町村で加入するよりも保険料が高くなることが多いです。
個人事業主と法人は収入ー費用=利益(所得)、会社から給与をもらっている人は給与総額ー給与所得控除=利益(給与所得)
税金は所得(利益)に税率をかけて計算するのですがその利益は(1)売上等の収入 から (2)仕入・従業員給与・光熱費など事業にかかった費用 を引いた金額となります。
社長やサラリーマン等、会社から給与を貰っている方は給与収入から給与所得控除(収入に応じて65万円から最大210万円)を引いた額が給与所得とされます。
個人事業の場合、自分から自分に給与を払うことはできませんが、法人とその社長は別人格なので給与を払うことができます。
なので株式会社を設立し、会社から社長へ給与を払うことで給与所得控除を活用することができ全体の所得を減らすことができます。
しかし、規模によって個人事業の方が税金や社会保険料が低かったり、法人の登記や社会保険の届出など事務負担などが面倒だったりするので会社設立にはよく検討する必要があります。
所得税は5%~45%までの累進税率、個人住民税は一律10%+均等割4~5千円
所得税率は所得に応じて5%~45%になります。所得が195万円以下は5%、以降段階的に上がっていき4,000万円超は45%となります。全部で7段階あります。住民税は一律10%と均等割が4~5千円になります。
平成25年から令和19年までは所得税額に2.1%をかけた復興所得税も必要になります。
個人事業税は業種により異なりますが3%~5%となります。あと事業税には事業主控除額があり年間290万円が所得金額から控除されます。
国民健康保険は市町村ごとに異なる。限度額は年間96万円前後
国民健康保険は市町村や所得・加入者の人数により変わります。市町村は固定資産税額も計算に含まれるので詳しくはお住いの役所の担当課にお問合せ下さい。
国民健康保険の限度額は私が調べた市町村では年間96万円になります。
国民年金保険料は毎年4月に改訂されます。令和2年4月から令和3年3月の保険料は月16,540円になります。平成10年4月から平成17年3月までは13,300円でしたので、この10数年で2割以上増加しています。
法人税・住民税・事業税は22%~37%
法人にかかる税金も所得に応じて税率が違いますが所得税ほど細分化されていません。
法人税は800万円以下は15%、800万円超は23.2%
住民税は都道府県・市町村により異なりますが標準税率は法人税額の7%+均等割(最低7万円、資本金等の額により増加する)
事業税は400万円以下、800万円以下、800円超で税率が異なり都道府県・資本金等の額によっても税率が違うのですが中小企業の場合5%~10%になります。
社長の社会保険料は法人と個人で折半(合計約30%)
法人を設立して社長となり社会保険に加入すると保険料は約30%になり、法人と社長で半分づつ負担することになります。
個人事業主の場合は国民年金なのですが今回は厚生年金になるので、保険料も月13,300円の定額ではなく給与の額に応じて増加します。
法人の方が税金は少ないが社会保険料の負担が増える
年間の利益が1,000万円の個人事業主の場合、1年間の税金は約220万円必要で、国民健康保険と国民年金の年間合計は約116万円で、税金と社会保険料の合計は年間約336万円となりました。
同じ事業の利益で法人を設立して社長の給与をそこから年500万円支払った場合(法人の利益年500万・給与年500万、合計1,000万円)、法人の税金は約98万円、個人の税金は40万円、税金合計は約138万円となり、社会保険料は会社負担・社長負担合計で年間約150万円、税金と社会保険料の合計は年間約288万円となりました。
最後に社長の給与を年500万円から年800万円に増やした場合、法人の税金は年間約24万円、個人の税金は年間約96万円、社会保険料は会社負担・社長負担合計で年間約234万円、税金と社会保険料の合計は年間約354万円となりました。
まとめ
今回の場合、給与所得控除により個人事業より法人+給与の方が税金は低くなるのですが、社会保険料の負担が大きくなっています。
事業、内容や規模により個人と法人、どちらが有利か不利か一概にはいえませんので、それぞれのメリットとデメリットを確認して慎重に検討していきましょう。